再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「待って! 悟己がいるのよ」


「ぐっすり眠っている」


「お願い、今日は、もう……」


「悪い、無理」


返事と同時に立ち上がった彼はリビングルームに向かい息子の様子を確かめた後、寝室に戻り扉を閉める。

大股で私のもとに戻り、手早く衣類を脱がしていく。

私の抵抗を無視した振る舞いに胸が痛む。


「お前がいなくなるのは、耐えられない」


先ほどよりはずいぶん優しく唇に唇で触れながら、ささやく。


「……もう、逃げたりしないわ」


悟己の存在も知られた今、逃げるすべはない。

以前のように逃亡すれば本気で惺さんは悟巳を奪うだろう。


「だったら、信じさせて」


こじつけのような言い方に、どう反論すればいいのかわからない。

素肌に触れる唇に、身も心も翻弄される。

本当にこの人はズルい。

触れる肌は熱いのに、心が冷えて寂しくて、彼を抱きしめてもただ不安だけが募った。


< 126 / 200 >

この作品をシェア

pagetop