再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
希和、なんで俺たちの関係を隠した?


出張前に正式に婚約しなかった詰めの甘さを、本気で悔やんだ。


なんのために東京に向かった?


本社への誘いはすでに断られており、数々の答えの出ない疑問だけが残る。

すべてを放り出して捜したい本音を無理やり抑えつけ、残務処理を粛々とこなす。

渕上には日毎に人相が悪くなっていると小言を言われたが、構う余裕もなかった。

希和を捜し、朝も夜も変わりばえしない真っ暗な毎日を過ごしていたある日、蔵元専務から連絡がきた。

退職前に希和から連絡があったそうで、彼も行方を案じていた。

こんな状況だが紹介者にきちんと挨拶をし、不義理を詫びるあたりが真面目な彼女らしいなと口元が緩んだ。

同時に会えない切なさと寂しさに胸が引き裂かれそうに痛む。

今ではこの痛みすら感じ慣れてしまっている。


『――私の大切な後輩を退職に追い込んだのですか?』


厳しい蔵元専務の声に驚いた。


『他社の社員に対して過干渉で失礼だと重々承知していますが、武居は声も弱々しく疲れている様子でした。退職理由は体調不良だと言っていましたが、精神的に体力的にも追い詰められていたのでは?』


過剰な心配は紹介者として大目にみていただきたい、と丁寧に付け加えられた。

きっと自身の幼馴染がしでかしてきた行為に負い目を感じているのだろう。
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