再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
その後の俺の行動は素早かった。

この数年で一番の集中力を発揮し、視察を急いで切り上げ、領収書を確認した。

職権乱用だが、やっと見つけた手がかりを手離せない。

詳細を調べ、後の仕事は渕上に指示し、緊急のもの以外はすべて後日に変更した。


『武居さんが見つかって本当によかったですが、どうか落ち着いてください』


俺の取り乱しように渕上は呆れ、無理強いは絶対にするなと注意を繰り返した。

わかっているが、どうしてもはやる気持ちを抑えられない。


一刻も早く抱きしめて、夢ではないと実感したい。


名前を呼んで、呼ばれたい。


触れて、温もりを感じたいんだ。


どれだけ焦がれていたのかを、改めて痛感する。

結局、さらうように自宅へ連れてきて強引に抱いてしまったのは猛省している。

寝室のドアを閉め、リビングに戻ると息子はまだ眠っていた。

そっと抱え上げ、急ごしらえで用意したベッドしかない子ども部屋に運び入れる。

丸い頬と小さな寝息が可愛らしく、ベッドに寝かせた後しばらく眺めていた。

問題は山積みだが、昨日までとは違う涙が出るほどの多幸感に酔いしれる。

今はもう、すべての事象に感謝したいくらいだ。

希和と息子のためならなんだってすると、決意を新たにした。
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