再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
部屋着のポケットのスマートフォンが振動し、部屋を出てリビングに向かう。


『武居が見つかったって本当ですか!?』


通話をタップした途端、興奮した様子の蔵元専務の声が響いた。

数分前に電話をかけたが応答がなかったため、留守番電話にメッセージを残していた。


「ええ、会えました。ご協力ありがとうございました」


息子の件も含め、希和から聞いたこれまでの経緯を話すと、彼は驚きと安堵の声を漏らしていた。


『失礼ですが、武居を今後どうするつもりですか?』


「入籍して家族になります。ふたりは今度こそ俺が絶対に守ります」


俺以外の男に任せるなんてありえない。

即答すると、蔵元専務が小さく笑う。


『武居には困ったことがあればいつでも力になると伝えてください。なにかわかれば連絡しますが、お互いに令嬢たちの動きや企みには引き続き注視をしましょう』


不要な助力と不穏な忠告を残して、彼は電話を切った。


「まったく……油断ならないな」


小さな息を吐いて、時間を確認する。

やっとの思いで取り付けた恩人との約束の時間が迫っていたため、渕上に連絡をし、外出準備を整えた。

しばらくしてやってきた渕上は再び小言と苦言を口にしつつも、留守番役を引き受けてくれた。


「時間外に悪い」


「でしたら三人で一日も早く幸せになってください」


有能な秘書の言葉を胸に刻み、夜の街に車を走らせる。

まずはその第一歩を踏み出さなくてはいけない。
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