再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
自宅を出る前に念のため連絡は入れていたが、明らかに歓迎されていなかった。

希和にも頼んでいたが、実は希和と同席して面会する前に、先に時間をいただきたかった。

訪問したいと伝えた際も不機嫌そのものだったが、指定した場所なら会うという返事は有り難かった。

カウンター席が七つとテーブル席が四つの、落ち着いた雰囲気の喫茶店に足を踏み入れる。

カウンター席には数名の客がおり、テーブル席のひとつにはすでに彼女が座っていた。


「初めまして、嵯峨と申します。お待たせして申し訳ございません」


「徒歩五分の場所なので、そう待っていません」


立ち上がった沢野井さんが不愛想に返答し、鋭い目を向けてくる。


「とりあえず、座りましょうか」


促され、向かいの席に腰を下ろす。


「希和を助けていただきありがとうございました」


この人に感謝と謝罪を伝えなければと、希和の話を聞いた後で真っ先に考えた。


「私の至らなさが原因でご迷惑とご心配をおかけして申し訳ございませんでした。希和と悟己をこれまで守ってくださって、ありがとうございます」


心からの感謝を込めて、頭を下げた。


「……あなたに会ったら、どんな悪口を言おうかとずっと考えていたのよ。あんなに真っ直ぐな子を傷つけ心を踏みにじって、挙句の果てに放り出す最低男だもの」


直接的な物言いが深く胸に刺さる。

丁寧さを取り払った態度に沢野井さんの怒りの凄まじさを感じ、そろりと顔を上げた。
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