再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「ところで、ここまで結婚を急ぐのはほかに理由があるんじゃないの?」


すうと目を細めて、沢野井さんが不敵に口角を上げる。


「ええ、舘村家は私との結婚をあきらめていません。希和が原因だと気づいています」


元々、希和を排除してまで目的を達成しようとしていた一族だ。

希和を俺が必死に捜索しているのも把握しているはずだ。

俺が希和を見つけ出す前に再び接触し、釘を刺す心づもりだろう。

悟己の存在を知られたら、なにをされるかわからない。

ふたりを守るために法的な権利はもちろん、万全の対策を取りたい。

自分がまいた種とはいえ、今度こそ絶対に手出しはさせない。

厄介な令嬢の件を説明すると、沢野井さんは大きく息を吐いた。


「名家は色々と面倒ね。好きな人と一緒になるだけなのに……重い荷物を背負っているわね。だからといって同情はしないけど」


「わかっています。希和がいてくれるならどんな荷物も背負う覚悟があります」


後継者としての責務も、希和とともに生きるためなら喜んで受け入れるし、嵯峨の名が有利ならいくらだって利用する。

彼女と息子さえいてくれたら、ほかにはなにもいらない。

俺の幸せはふたりとともにある。
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