再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「俺なりに最良の方法をとったつもりだ。不愉快にさせたなら謝る」


「……違うの、私たちのことを考えてくれるのは有り難いけれど、せめてひと言相談してほしい。夫婦とは寄り添い合うものでしょう?」


「……そうだな、悪い」


歯切れの悪い返答に、本心では納得していないと予測する。

それでも自分の意見を以前のように押しつけないのは、過去への後ろめたさなのだろうか。

そもそも再会してから一度も気持ちを聞いていない。

もう離さない、会いたかった、とは何度も言われたが好きとは言われていない。

気づいた現実に呼吸が苦しくなり、目の前が真っ暗に染まる。


今も私を、好きでいてくれている? 


結婚するのは責任をとるため? 


それとも後継者が必要だから?


尋ねたい衝動がこみ上げるが、私だってまだ想いを告げていない。

勘の鋭い彼はすでに察しているかもしれないけれど。

自分の状況を棚に上げて、彼に求めすぎている気がする。


だけど今さら、なにをどう言えばいい? 


そもそもどう切り出すべき?


ずっと想っていたと、愛していると、素直に伝えれば応えてくれるの? 


もし、舘村さんのように、演技で返されたらどうしよう?


鈍い私はきっと嘘を見抜けず、惺さんの言葉を鵜呑みにするだろう。

嘘はつかないと誓ってくれたが、どうしても疑ってしまう自分がいる。

望む答えをくれても、本心でなければ意味はない。

かといって、否定的な返答を受け入れる余裕もない。

年齢を重ねても、母親になっても、進歩がなく、面倒な性格の自分が情けない。
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