再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
『――情けない云々じゃなくて、正直に気持ちを伝えて、尋ねたらいいだけでしょ』


親友の呆れ声が耳に痛い。

よく晴れた日曜日の午前、再会と引っ越しを知らせるため親友に電話をかけた。

惺さんからも、杏実にこれまでの礼と迷惑をかけたお詫びを伝えてほしいと頼まれていた。

直接連絡したいとも再三言われ、驚くからと必死で止めたほどだ。

休日の早朝に急ぎの案件で呼び出しを受けた彼は、午前中いっぱいは仕事だという。

先ほど起きたばかりの悟己は朝食を食べて、お絵かきを楽しんでいる。

春香さんにも連絡をと考えていたが、惺さんから伝言を受け取った。

明日、きちんとお礼を伝えて説明するつもりだ。


『とんでもない展開に驚いたけれど……よかったわね』


「そう、なんだけど……」


『なにを悩むの? あの嵯峨副社長が、どうでもいい女を四年近くも捜し続けるわけないでしょ』


親友に諭され、ため息が漏れる。


『過去が過去だし、怖くなる気持ちも戸惑いもわかるわ。でもそれは副社長に直接ぶつけなくちゃ、解決しないわよ』


真摯な声が胸に深く染み込んでいく。


『四年前もわかりあっていたつもりですれ違ったんでしょ。嫌になるくらい言葉を交わさなきゃお互いの本心は理解できないわ。希和だって変わらなくちゃ』


「……そうね、ありがとう。前向きに考えてみる」


『ううん。ねえ、希和はいつも計画を立てて悩んでから動くけれど、たまには心のままに行動してみたら?』


明るい親友のアドバイスがコトリと心を動かす。

再度礼を告げ、通話を終えた。
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