再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
翌日から彼はさらに忙しくなった。

樋浦、舘村家について調査しつつ日々の業務もこなす。

帰宅が遅くなる日が続き、整った面差しには疲れが滲んでいた。

対する私は自宅で悟己とともに、ただ守られているばかりだった。

樋浦さんの事件から一週間が過ぎた。

迅速で冷静な対応が功を奏したのか、SNSは多少落ち着いてきていると帰宅した惺さんに教えてもらった。


「だったら……そろそろ出勤して、悟己を保育園に預けていい? 外に出たがっているし」


「ダメだ。まだ両家を探っている途中だし、認められない」


厳しい反対に反論しようとしたが、疲労が色濃く滲む面立ちを目にすると、なにも言えなかった。

そもそも学生時代に私が恨みを買ってしまったのが元凶だ。

舘村さんにとっても私は目の上のたん瘤なのだろう。

名家の繋がりや力関係のわからない私は惺さんの力にはまったくなれないどころか、足を引っ張っている。


……こんな日々が続いて、惺さんは幸せなのだろうか。


私を捜して結婚したのを後悔していない? 


優れた容姿と頭脳、名家出身の惺さんならどんな女性でも妻に迎えられたはずなのに。


しかも私は過去の出来事を克服もできず、ウジウジ立ち止まっている面倒くさい女だ。

せめて自分の面倒くらい自分で見れるようにしなくてはと思うのに、良案が浮かばない。


「悟己は嵯峨の後継者だ。危険な目にあわせるわけにいかない……この話は以上だ」


硬い口調で会話を切り上げ悟己の部屋に向かう惺さんの後ろ姿を見つめ、唇を嚙みしめた。
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