再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
先に休むよう告げられ、寝室のベッドに横になったが睡魔は一向にやってこない。

さらに一時間ほど経過したが状況は変わらず、惺さんも来ない。

あきらめて読書をしようかと思案したとき、ドアが開き、彼が入って来た。

少し前の会話の気まずさがあり、咄嗟に寝たふりをする。

すると彼がベッドサイドに屈みこんで、私の頬を長い指で撫でた。


「もう限界で……耐えられないんだ、悪い」


声が耳に届いた瞬間、唇に冷たく柔らかなものが触れ、キスされていると遅れて理解した。

それからもう一度私の頬を撫でて、部屋を出て行った。


「耐えられないって、私に? この生活に?」


震える声が漏れた。

胸の奥が痛み、起き上がって自分自身を抱きしめた。

違う、大丈夫、邪推しすぎよと否定したいのに、自信がない。

ネガティブな思考が心の中を黒く染めていく。

どんなに愛していても大切な人を苦しめるだけなら、やはりそばにいるべきじゃない。

結論に至った瞬間、胸がこれ以上ないくらいに締めつけられ、冷たい涙が頬をつたった。


再び深く愛し愛される幸せを知った私が、今さら離れられるだろうか? 


悟己は?


自問自答を繰り返すが、明確な答えにはどうしても辿り着けなかった。
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