再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
樋浦家は娘の悪行を認め、恵理さんは今後、両親の厳しい監視のもと生活するそうだ。
さらに私への数々の非礼の賠償をしたいと言ってきているという。
この件に関しては先輩も間に入り、話し合いの場を設けるらしい。
私は無理に参加しなくていいと、気遣わしげに説明してくれた。
少し考える、と正直に返答するとわかったと優しく頬を撫でられた。
舘村家は今も調査中で、奈央さんはなんと行方知れずだという。
「この状況下での希和の出勤は本音を言えば見送りたい」
渋面を浮かべる彼が、本気で私の身を案じてくれていると今はわかる。
「でも守られてばかりなのは嫌なの。惺さんだけに戦ってほしくない。これは私たち夫婦の抱える問題でしょう? 一緒に立ち向かいたいし、考えたい。そばにいたいの」
「……本当、敵わない」
クシャリと前髪をかき上げながら彼は困ったように微笑んだ。
敵わないのは、いつだって私のほうなのに。
大きな背中を追いかけて、眩しい姿に少しでも近づきたいといつも希っているのを知らないでしょう?
もう、逃げたくない。
泣いて、大切なものを失うのを眺めるだけの日々は終わりにしたい。
あの夜の台詞を今は確認できる勇気がもてないけれど、まずは一歩踏み出せたと思っていいだろうか。
さらに私への数々の非礼の賠償をしたいと言ってきているという。
この件に関しては先輩も間に入り、話し合いの場を設けるらしい。
私は無理に参加しなくていいと、気遣わしげに説明してくれた。
少し考える、と正直に返答するとわかったと優しく頬を撫でられた。
舘村家は今も調査中で、奈央さんはなんと行方知れずだという。
「この状況下での希和の出勤は本音を言えば見送りたい」
渋面を浮かべる彼が、本気で私の身を案じてくれていると今はわかる。
「でも守られてばかりなのは嫌なの。惺さんだけに戦ってほしくない。これは私たち夫婦の抱える問題でしょう? 一緒に立ち向かいたいし、考えたい。そばにいたいの」
「……本当、敵わない」
クシャリと前髪をかき上げながら彼は困ったように微笑んだ。
敵わないのは、いつだって私のほうなのに。
大きな背中を追いかけて、眩しい姿に少しでも近づきたいといつも希っているのを知らないでしょう?
もう、逃げたくない。
泣いて、大切なものを失うのを眺めるだけの日々は終わりにしたい。
あの夜の台詞を今は確認できる勇気がもてないけれど、まずは一歩踏み出せたと思っていいだろうか。