再縁恋~冷徹御曹司の執愛~

12.伝えたい想い

春香さんにも事情を話して、出勤時刻や体制を見直してもらった。

数々の迷惑を謝罪すると、水くさいと叱られ温かさに泣きたくなった。

私が店に出勤し、一週間が過ぎた。

これまでの心配や警戒をよそに、今は穏やかで落ち着いた日々を過ごしている。

今日、春香さんは午後から商店街の会合に出席するため外出し、私は店で接客をしている。

時計の針が午後一時を指したとき、店の扉が開く音がした。


「いらっしゃいませ……あら、白鳥さん」


「こんにちは、武居さん。今朝ぶりですね」


「なにかお探しですか?」


店内に視線をさまよわせる姿に声をかける。

今は彼以外に客はいない。


「勤務中に申し訳ないのですが、折り入ってお話があります。入籍された件で」


いつもの彼とは違う、どこか緊張した面持ちだった。

そういえば保育園には報告したが、白鳥さんには個別に話していなかった。

それに樋浦さんの騒ぎもあり、良くも悪くも私の結婚は周囲の知るところとなっていたので、とくに気に留めていなかった。


「……相手は嵯峨ホールディングスの御曹司ですよね? もしや悟己くんを後継者にするためだけに入籍したんですか? あんな男はあなたに相応しくない」


あの騒ぎ以降、惺さんは一部の人から女性を弄ぶ最低男というレッテルを貼られていた。

すべては誤解だと公に説明も行ったのだが、取り繕っただけだと信じない人はいまだ一定数いる。
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