再縁恋～冷徹御曹司の執愛～
「冗談を言わないで！　あなたに相応しいのは私だけよ。蔵元の御曹司も皆、騙されているのよ。写真を見たでしょ？　年下の男を誑かして連れ込んでいたのよ！」


「違います！」


「誤解です。僕は武居さんに話があっただけです」


白鳥さんと私の反論を、惺さんは黙って聞いていた。


「白鳥さんには後で話を聞くとして……希和が浮気するなんてありえない」


舘村さんの腕を雑に離し、私の頬を手の甲で撫でた惺さんがきっぱりと言い放つ。


「惺、さん」


信じてくれるの？
　

言葉にならない感情があふれ、視界が滲みそうになる。


「こんな女、信じる価値もないわ！　惺さん、私の話を聞いて？　うちとの取引がなくなったら困るでしょう？　私たちは公私ともにピッタリなパートナーなのよ」

　
真っ赤な口紅が塗られた唇で、甘えた声で告げる。
　
取引、という単語に心が冷えた。


「ずいぶん見くびられたものだな。取引は既に完了しているうえ、法的にも問題はない。あなたとの付き合いなどこちらから願い下げだ。金輪際関わるな」


「え……？　ちょっと待って、正気なの？」


「過去の婚約話については申し訳なく思っている。とはいえ、樋浦家の件も含めさすがにもう看過できない。嵯峨家は舘村家と絶縁する」


淡々と説明する。


「そんな真似、できるはずないでしょう！」


「御社が裏でずいぶんと腹黒い取引を長年重ねてきたのも調査済みだ。なにより俺の妻を散々傷つけて追い込んだ罪は重い」


「なんですって……まさか……」
　
蒼白になり息を呑む舘村さんには目もくれず、惺さんは私の顔を覗き込み心配そうに眉根を寄せる。
< 186 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop