再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「希和、顔色が悪い。本当に大丈夫か?」


「へ、平気……あの、私、浮気なんてしてない」


「……わかっている」


優しい物言いに一瞬現状も忘れて、視界が滲む。


「納得できない! なにかの間違いよ、おかしいわ! そうよ、すべては樋浦の馬鹿な令嬢が企んだの、私は哀れな被害者よ」


ヒステリックに叫び続ける舘村さんを一瞥して、惺さんはガラス戸に向かって大きな声を出した。


「渕上、後は頼む。この女を連れ出せ。視界に入るのすら不愉快だ」


「はい。舘村家にはすでに連絡済です」

 
店内に入ってきた渕上さんの姿に驚く。

どうやらずっと近くで待機していたらしい。

渕上さんの指示でほかにも何人かの男性がやってきて、声を上げている舘村さんを店外へと連れ出していた。


「あの……申し訳ございません。僕が軽率な行動をしたばかりに……動画は、写真の流出は、どうなっていますか?」
 

白鳥さんが青い顔で惺さんに問いかける。


「事前に対応していたので外部に流出はしていないので心配無用だ。希和は俺の妻だ。絶対に誰にも譲らない」


凛とした声で宣言する惺さんに、こんな状況だというのに心が甘くしびれた。


「……わかっています。僕は武居さんに幸せになってほしかっただけです。ご迷惑をかけて申し訳ございませんでした」
 

深々と頭を下げる白鳥さんに声をかけようとすると、惺さんに阻まれた。

項垂れた白鳥さんは渕上さんに促され店から出ていった。
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