再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
『副社長が必死なのは希和と悟己くんを守りたかったからでしょ。愛もないのに義務や体面だけで動く人じゃないって希和が一番知っているんじゃないの? 私にさえ頭を下げる人が妻を大切に想わないとでも?』

 
……本当ね、杏実の言う通りだった。


「希和が今日、舘村の令嬢に離れないと言い切ったとき、どれだけ嬉しかったか」


「私も、惺さんが信じてくれて嬉しかったわ」


胸の奥が熱くなり、こらえきれなくなった涙が頬をつたった。


「愛しているわ」


「俺も希和を愛している。ずっと苦しめて悪かった」
 

涙を唇で拭いながら、優しくささやく。
 
最初から難しく考えすぎず、想いを素直に伝えればよかった。

本当に私たちは何度遠回りをしたら気が済むのだろう。

愛しさで胸がいっぱいになって、涙がとめどなく流れ落ちる。


「泣くな」


「だって……」


「じゃあ俺に慰めさせてくれるか?」
 

そう言って、彼は私を軽々と横抱きにする。
 
突然の事態に、涙が一瞬止まってしまう。


「さ、惺さん?」


「希和のすべてに触れて、甘やかさせて」
 

啄むような口づけを落とされ、頬が熱くなる。


「……本当に可愛い」

 
小さく笑った彼の首に、返事の代わりに抱き着いた。
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