再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
その後、副社長と顔を合わせる機会はなく、退社した。

自宅に到着し、夕食を終えて、いつものように入浴を済ませる。

ふと壁にかけた時計に視線を向けると、午後十時過ぎを指していた。

ベッドに腰かけた途端、ベッドサイドに置いていたスマートフォンが渕上さんからの着信を告げた。

なにかあったのかと緊張しつつ、手に取り通話をタップする。


『夜分に突然すみません、渕上です。今、お時間よろしいですか?』


「大丈夫です、どうかされたのですか? 今日は札幌駅近くで会食ですよね?」


副社長と渕上さんの今夜の予定を思い出す。


『私の長女が高熱を出したので副社長おひとりで向かわれたんです。ところが会食終了後、お店で体調を崩されたと連絡がありまして』


二児の父である渕上さんは幼い次女を妻に託し、現在、救急病院で長女に付き添っているという。

引っ越しや転校などの緊張が緩み、蓄積していた疲労から発熱したのではと医師に言われたそうだ。


『申し訳ないのですが、副社長を迎えに行っていただけませんか。寒河は東京で、事情を知らないほかの社員には任せられないので……』


「わかりました、すぐに向かってタクシーで送り届けます。大丈夫です、私、普段からあまり風邪もひかないので」


病院の処置が終わり次第向かうと言われたが、断った。

奥様や娘さんたちに付き添ってあげてほしい。

渕上さんに詳細な店の場所と副社長の自宅を教えてもらう。
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