再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
しばらくして、渕上さんの依頼を受けた医師がやってきた。


「過労による体力低下、それに伴う発熱ですね。ゆっくり休息されたら回復しますよ。今すぐはムリでも栄養価の高いものを口にするのを忘れないように」


往診結果にホッとした。

安静にするよう強く言われ、うなずく。

医師を見送り、彼の寝息が落ち着いたのを確認してから体温計などの買い出しに出た。

大通りにあるこのマンションの直ぐ近くにはコンビニが多い。

必要なものを買って急いで戻ると、副社長の様子は変わらず落ち着いていた。

渕上さんに往診結果を連絡し、ベッドサイドに水と体温計を置いて小さく息を吐いた。

偶然にも渕上さんの長女と似たような診断結果だとぼんやり考えた。

目を閉じていても整った面差しは変わらない。

ただいつもの近寄りがたさは消え、どこか親近感がわいた。


「インフルエンザ等ではなくてよかったですが、無理しすぎです。早く良くなってください。足を引っ張らないよう、頑張りますから」


朝は早く出勤し、退社時間も遅い。

道内の出張はもちろん、ほぼ毎日会食に出かけている。

誰よりも忙しく動く姿を近くで見ていたのに……秘書として不甲斐ない自分に腹が立った。

うなされ、うっすらと目を開く彼に水分補給を促す。

幾度となく汗を拭きとり、冷却シートを変えた。

夜明け前には薬が効いたのか、熱が少し下がっていた。

ホッとして、ベッドサイドの床に座り込んだ。

肌に触れるひんやりとした感触が気持ちいい。
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