再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
寝室のカーテンの隙間から朝の光が漏れだし、室内をうっすら明るく照らす。

改めて広く綺麗な部屋に小さなため息が漏れた。


「本当に、雲の上の世界の人だよね……副社長、できるだけたくさん休んでください」


額にはらりとかかる長い前髪を指でゆっくりとかき分けた途端、瞼が急激に重くなった。

朝晩は気温が下がるはずなのになぜか私は心地よい温もりに包まれ、鼻をくすぐる優しい香りと伝わる温かさに思わずすり寄る。


「……警戒心は、ないのか? お前、誰にでもこうなのか?」


どこかで聞いた声が耳にわずかに届く。


「帰れと言ったよな?」


――病人を、上司を、放って帰れないわ。


心の中で反論するが、きちんと声に出せているかわからない。


「いい気味だと思わなかったか? 自分に冷たく当たる人間は嫌だろ」


――まさか。


「俺が嫌いだろ?」


――苦手だったけれど、今は違う。


尊敬しているわ、でも体調不良に気づいていたのに、配慮できなくて申し訳ないの。


「悪いのは俺だ……ありがとう。もう眠れ」


髪を大きな手で撫でられ、優しい指先が嬉しくて胸がいっぱいになる。

なんて幸せな夢なんだろう。


……夢?


急激に意識がはっきりして、目を開いた。

眼前に、昨夜上半身だけシャツを着替えさせた副社長の姿があり、背中には長い腕が回っていた。
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