再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
ちょっと、待って……! 

なんで? 


明け方まで副社長の看病をしていたはずだ。

熱が下がって安心して……その後は?


まさか私、眠気に負けてベッドに潜りこんだ? 


最悪の事態に一気に血の気が引く。

気づかれたら、絶対に軽蔑される。

起こさないようにそっと、かつ俊敏に動いて副社長の腕から抜け出した。

ドッドッドッと鼓動が重く速いリズムを刻み、背中にじっとりと嫌な汗が滲む。

副社長に背を向け、フローリングに座り込み必死に呼吸を整える。

ベッドサイドの時計を見ると午前九時過ぎだった。


「……武居?」


掠れた低音が背後から聞こえ、びくりと肩が跳ねた。


「す、すみません。私」


きちんと弁明したいのに、緊張と焦りで言葉がうまく発せない。


どうしよう……!


ギュッと目を瞑ると、頭を撫でる優しい感触があった。

髪に触れられ、目を見開く。


「……まだ、早いだろ」


予想と違う反応に思わず振り返ると、優しい表情を浮かべた副社長が半身を起こしていた。

病み上がりで顔色は良くないが、美麗な容貌は変わらず、むしろ気だるげなしっとりした色香を含んでいる。


「昨夜はありがとう」


「いいえ、そんな……覚えているんですか?」


「ああ、おぼろげだが」


そう言って、再び私の頭を優しく撫でた。

予想外の行動に理解が追いつかない。


怒っていないの? 


もしかして、ベッドの件は気づいていない?
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