再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「なんで、いきなり……こんな真似を、するの?」


もう何度この問いかけを口にしただろう?


「希和が逃げたから」


返される答えもずっと同じだ。


「お前は俺のものだろ」


傲慢な物言いと鋭い眼差しとは裏腹に、触れる指と落とされるキスの優しさに混乱する。

あの頃のように愛されているかもしれないと、勘違いしそうになる。


そんなわけ、ないのに。


彼には婚約者がいるのだから。


知らなかったのは私だけ。


常に冷静で、損得勘定が得意な彼は、一時の感情に振り回されたりしない。

後ろ盾もなく、会社に利益ひとつもたらさない私に、最初から本気になるはずがなかった。


十分すぎるくらいに学習したのに、何度同じ間違いを繰り返すの?


私を追うのは、暇つぶしの遊び相手の逃亡が悔しくて許せないから。

この時間をやり過ごせば、きっとまたすぐ興味を失う。

だから今ここで、知られるわけにはいかない。

四年前についた嘘を守り通すためなら、胸が張り裂けそうな痛みにだって耐えてみせる。


「……俺以外の男のことでも考えているのか?」


情事の最中とは思えない、冷たい声と鋭い視線にひゅっと息を吞む。

整いすぎた面差しが至近距離に迫り、怒りをぶつけるかのように荒々しく口づけられる。
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