再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
だが、今さらどう言えばいい?


後日手にした調査報告書には真相が書かれていた。

彼女は厄介な嫉妬に巻きこまれた被害者だった。

噂を鵜吞みにした自分の振る舞いが情けなく、恥ずかしい。

社会人としても、後継ぎとしても失格だ。

態度を改めたくとも、怯えた目を向けられると焦り、混乱して、さらに無愛想になる。

余裕の無さからキツイ言い方ばかりしてしまう。

対人関係でこれほど悩んだことはなく、いつだって自分の思い通りに事を進めてきた。

それなのに、彼女にだけはうまく気持ちを、謝罪を、伝えられない。


「……本当に、お人よしすぎる」


ぼんやりと自身の過去の行いを思い出し、つぶやく。


いくら上司とはいえ、疎ましい相手の看病を引き受けるか? 


俺なら絶対に嫌だし断る。

しかもこんな深夜に来るなんて、緊急事態とはいえ、危機意識がなさすぎる。


「……きっと、覚えていないだろうな」


寝ぼけていた彼女が吐露した感情の数々。

初めて彼女の本音、心の奥深くに触れた気がした。

いつもの生真面目な秘書の姿ではなく、ひとりの可愛らしくも脆い女性がいた。

あまりに繊細で優しく、裏表のない物言いに心が揺さぶられた。

ずっと傷ついてきた彼女を守りたいと、どうしようもなく願った。
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