再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「本当に……悪かった」


頭を下げ続ける彼を急いで止める。


「やめてください、大丈夫ですから。信じてくださっただけで十分です」


「いや、だが……それでは」


躊躇いがちに頭を上げる副社長に言葉を重ねる。


「でしたら、このまま秘書を務めさせてください。それが私の望みです」


こんなに好待遇の職場はそうそう見つからない。

私の希望に副社長は困惑気味に眉根を寄せた。


「……本当にいいのか? 俺が助かるだけだぞ」


「はい」


即答すると、彼はふわりと口元を緩めた。


「ありがとう。では正式に、俺の秘書になってくれないか?」


「こちらこそどうぞよろしくお願いいたします」


「ずっと、大切にすると約束する」


美麗な面差しを嬉しそうに綻ばせる姿に胸が苦しくなる。


なんで、そんな、恋人みたいな言い方をするの?


声にならない疑問を必死に呑み込むと、ドクドクと耳に鼓動の音が大きく響く。


「もう少しふたりきりで話したいが、さすがに時間切れだな……行こう」


残念そうに肩を竦めて促され、踏み出した足取りはおぼつかなかった。
< 36 / 200 >

この作品をシェア

pagetop