再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
訪問先は蔵元株式会社だった。
「あの、私は車内で待機しておりましょうか……?」
過去の噂のせいで前勤務先時代から、訪問時にはあからさまに眉を顰められる場合が多かった。
危惧しつつ尋ねると、大丈夫だから心配するなと力強く言い切られた。
どうか商談の邪魔にならないようにと願いながら、応接室に足を踏み入れる。
私の心配をよそに副社長と専務は和やかに挨拶を交わし、資料を取り出して事業の話を進めていく。
その間、できるだけ目立たないよう手元に視線を落としていた。
今日、この場に樋浦さんの姿がなくてよかったと安堵する。
樋浦さんは自身の父親が経営しているリゾートホテル業に従事している。
長年蔵元株式会社の社員旅行の手配などをすべて引き受けているらしく、頻繫に来社しているという。
私の再就職について、先輩は樋浦さんに話さないと紹介時に言われていたが、どこから情報を得てくるかわからず油断できない。
話がひと区切りついたところで、副社長がふいに話題を変えた。
「武居を紹介していただき、ありがとうございます。真面目な勤務態度と細やかな気遣いに助けられています。知識も豊富で商談を幾つも成功に導いてくれていますよ」
「それを聞いて安心しました。よかったな、武居。俺の目に狂いはなかっただろう?」
宗太先輩が嬉しそうに返答し、私に視線を向ける。
「あの、私は車内で待機しておりましょうか……?」
過去の噂のせいで前勤務先時代から、訪問時にはあからさまに眉を顰められる場合が多かった。
危惧しつつ尋ねると、大丈夫だから心配するなと力強く言い切られた。
どうか商談の邪魔にならないようにと願いながら、応接室に足を踏み入れる。
私の心配をよそに副社長と専務は和やかに挨拶を交わし、資料を取り出して事業の話を進めていく。
その間、できるだけ目立たないよう手元に視線を落としていた。
今日、この場に樋浦さんの姿がなくてよかったと安堵する。
樋浦さんは自身の父親が経営しているリゾートホテル業に従事している。
長年蔵元株式会社の社員旅行の手配などをすべて引き受けているらしく、頻繫に来社しているという。
私の再就職について、先輩は樋浦さんに話さないと紹介時に言われていたが、どこから情報を得てくるかわからず油断できない。
話がひと区切りついたところで、副社長がふいに話題を変えた。
「武居を紹介していただき、ありがとうございます。真面目な勤務態度と細やかな気遣いに助けられています。知識も豊富で商談を幾つも成功に導いてくれていますよ」
「それを聞いて安心しました。よかったな、武居。俺の目に狂いはなかっただろう?」
宗太先輩が嬉しそうに返答し、私に視線を向ける。