再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
信じたい気持ちと恐れが交錯する。

だって、どんなに厳しくされても無理難題を突き付けられても、どうしても嫌いになれなかった。

尊敬と憧れが恋に変化するのに時間はかからなかった。

認めなければ、秘書としてずっとそばにいられると、恋情を心の奥深くに封印した。

今のままで十分幸せだったのに、欲張りな私は夢を見たくなってしまった。


「……好き、です」


心の戒めが外れて、本心が唇から零れ落ちた。

吐き出した想いに心が大きく揺れて、視界が滲む。


ああ、もう無理だ。


この人が、欲しい。


「副社長が、好きです」


彼が驚いたように綺麗な二重の目を見開く。


「は……? いや、待て。本当に?」


何度か瞬きを繰り返し、片方の手で自身の口を覆う。


「上司だから気を遣っているとかじゃなく?」


「惹かれてはいけないと、ずっと言い聞かせていました」


説明する声が震え、想いが募って胸が甘く痛んだ。

昂る感情に涙をこらえきれずうつむくと、グイッと腕を引かれた。

頬に触れるワイシャツの感触と柑橘系の香りに抱きしめられていると気づく。


「これからは俺に守らせてほしい。なにより……大切なんだ」


背中と後頭部に長い腕が回り、副社長の体温が伝わる。

あの看病の日と同じ温もりに包まれ、涙が止まらなくなる。
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