再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
先日逃げ帰った彼のマンションへ向かう。

地下駐車場で車から降りると、大きな手にすぐに包み込まれた。

さすがに人目が気になり、ほどこうとすると「見せつけてやればいい」と言って余計に力を込めてくる。

伝わる体温と間近で聞こえる低い声に、頬が火照るのを誤魔化すのにひと苦労だった。

車内、エレベーターの中でも、あまり言葉は交わさず、緊張ばかりが高まっていく。

玄関ドアを開けた副社長に促され、室内に足を踏み入れる。

相変わらず繋いだままの手を引かれ、リビングルームに入り、大きなソファに座った。


「少し待っていて。コーヒーでいいか?」


スーツの上着を脱いだ彼が口を開く。


「大丈夫です。お茶でしたら私が準備いたします」


「いい。今は秘書じゃなくて恋人だろ? 座ってゆっくりしていて」


焦る私の態度に眦を下げ、キッチンへ長い足で歩いていく。

今さらながらこの状況が信じられない。


「どうぞ」


センターテーブルに置かれたカップからは、コーヒーの香ばしい香りが漂う。


「あ、ありがとうございます」


そっと口をつけるけれど、緊張で味がまったくわからない。

私の左隣に腰を下ろした彼は、落ち着いた様子でコーヒーを飲んでいる。
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