再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「……緊張しすぎ、零すぞ」


骨ばった長い指が私の手からカップを奪う。


「す、すみません」


「もう少し慣れてからと思ったんだが……憂いを早々に取り除くためにも話をしようか」


カップをテーブルに置き、真剣な目で私を見つめる。


「なんであんな悪評が?」


いきなり確信に迫られ驚く一方で、歯に衣着せぬ言い方がこの人らしくて納得する。


「……少し長い話になるのです」


息を吸い、覚悟を決め、記憶を手繰り寄せて話し始める。

副社長は先を急がせもせず、終始真剣な表情で聞いていた。

途中、反応を気にする私を安心させるかのように、ずっと指を絡めて握ってくれていた。


「――完全な逆恨みだな。名誉棄損で訴えたらどうだ?」


「証拠もないですし、もう過去の話ですから」


宗太先輩も火消しにずっと動いてくれていた件を付け足すと、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。


「自分の幼馴染が元凶なんだから当然だろ。いくら縁深い取引先だとしても、もっと毅然とした態度をとるべきじゃないか? それでさっきあんなに緊張していたのか……その女に会えればよかったな。お前を傷つけた責任を追求したたんだが」


「やめてください。副社長に迷惑がかかります」


樋浦家は札幌で名が知れているし、私のせいで事業に悪影響が出たら申し訳ない。

好戦的な態度に狼狽える。
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