再縁恋～冷徹御曹司の執愛～
「樋浦の令嬢の力くらいで揺らがないから心配するな。お前はお人よしすぎだ」


副社長は納得できない様子で、空いているほうの手で自身の髪をイラ立だしげにかき上げる。


「……改めて謝罪したい。つらい目に合わせてすまなかった。話してくれてありがとう」


「いいえ、信じてくださりありがとうございます」


首を横に振って返答すると、一瞬怒ったような表情を見せ、ギュッと私を抱きしめた。


「お前を傷つけた自分に今さらながら腹が立つ。本当に悪かった」


掠れた声に後悔と苦悩を感じ、腕の中で小さくかぶりを振る。


「……希和」


唐突に名前を呼ばれ、心が大きく跳ねて、揺れた。

心音がうるさいくらいに耳に響く。

好きな人に名前を呼ばれるのがこんなに嬉しいなんて知らなかった。

抱きしめていた腕を緩め、私の目を覗き込む。

眉間に皺を寄せ、なにかをこらえるようにゆっくりと瞬きをした。


「俺は今後、なにがあっても希和を信じるし、嘘はつかないと誓う」


「副社長……」


「惺、だ」


即座に訂正され、目を見開く。
< 44 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop