再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「恋人なんだから名前を呼ぶのは当然だろ? 敬語もなしだ」


「そんな、いきなりは無理です」


狼狽える私を、なぜか楽しそうに見つめてくる。

その視線だけで、心が甘く切なく疼く。


「可愛いな」


とんでもない台詞に頬が熱くなり、返答に窮する。


いきなりなにを言い出すの? 


「希和」


「は、はい」


「俺の名前は?」


「さ、惺、さん……」


たった三文字なのに胸が騒いで、滑らかに発音できない。

今、私の顔は真っ赤になっているに違いない。


「呼び捨てがいいが……まあ、まだ仕方ないか」


軽く屈んだ彼がなぜか嬉しそうに言って、コツンと自身の額に私の額を合わせた。


「ゆっくりでいいから、俺に慣れろ」


吐息の触れそうな距離に迫る、整いすぎた面差しに息を呑む。


なんで、こんなに急に甘くなるの? 


無愛想で女性嫌いという私の上司はどこ?


急激な態度の変化に戸惑いを隠せない。


「これからは俺に希和を守らせて」


額を離した彼がゆっくりと顔を傾け、頬に触れる指の感触に鼓動が速まっていく。

重なり合った唇の感触に胸が詰まり、信じられない幸せに目尻から涙が零れ落ちた。
< 45 / 200 >

この作品をシェア

pagetop