再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
雫に気づいた彼が、ほんの少し唇を離して問いかける。


「どうした?」


「嬉しくて……ホッとして……」


この胸の内はどうしたらうまく伝わる?


本当はずっと噂が嫌でつらかった。

でも誰かに甘えて、迷惑をかけたり、さらに噂が広がるのが怖かった。

それならひとりで耐えればいいと言い聞かせてきた。


「ひとりで頑張るな。これからは甘えろ」


柔らかな声に、心の戒めが一気に崩れた。

本格的に泣き出した私を、あやすように抱きしめ、涙を唇で拭う。

啄むような口づけを繰り返し、髪を撫でられ、伝わる体温に胸が震えた。


「ご、ごめんなさい……」


「謝るな。おいで、俺の気持ちを証明する」


そう言って、私の膝裏と肩に手を回して抱き上げた。

急に高くなった視界と浮遊感に驚いてしがみつく。


「本当に、可愛い」


「可愛く、なんか……」


思わず見上げると、妖艶な眼差しで見返してくる。


「頼むから、煽るな。ずっと我慢しているんだ」


こめかみに小さく落とされた口づけに、胸がチリと甘く焦げる。

火照っていく頬を隠すようにたくましい胸元に顔を埋めると、彼が小さく呻いた。


「……無自覚か」
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