再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
理性を総動員して、熱を帯びる頬を指先で包みながら、足早に自宅に向かう。

部屋に入りドアを閉めた途端、足から力が抜けた。

乱れた心音と目まぐるしい変化に戸惑いを隠せない。


「会社で……どうしよう……」


好きな人に会えるのは嬉しいし、公私混同はもちろんしない。

でも自分の無意識の態度が周囲に迷惑をかけないかと不安になる。

すでに大きく育ったこの気持ちを隠す自信がない。

でも周囲にバレるわけにはいかない。

惺さんにこれ以上迷惑や負担をかけたくない。

そもそもこの奇跡が、いつまで続くかわからない。

なにより嫌われたくない。

彼の立場はわかっているし、未来が交わるなんて大それたことは思っていない。

ただ一秒でも長く、一緒にいたい。


「お願い、神様」


口にした願望は自室の天井に吸い込まれた。
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