再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
惺さんと恋人になってから時間があっという間に過ぎた。

十一月に入り、気温がグッと下がった。

札幌市内では初雪が降り、市内のあちこちでは雪囲いをしている植木を目にする。

当初の予想を裏切り、惺さんは今も変わらず私を大事にしてくれている。

忙しい合間を縫って、幾度となく様々な場所にふたりで出かけた。

毎日会社で顔を合わせているのに、惺さんはこまめに私的な電話やメッセージをくれる。

日常の他愛無い会話が嬉しく、恋心は際限なく募っていく。

週末はほぼ、彼の部屋に泊まっている。

合鍵も渡され、私物も置くように言われた。

懐の深い恋人の姿に何度戸惑っただろう。

今では彼の体温や鼓動、香りが当たり前のように体になじんでいる。

これまで何度も抱かれ、甘い情事を思い出すだけで熱を帯びる自分が恥ずかしい。


『いい加減引っ越してこい』


再三言われているが、まだ決心はつかない。


だって、ともに暮らしてその後は? 


未来が繋がっていないのに温もりを失ったとき、立ち直れる? 


……いつかやってくる、悲しい現実が怖い。


『毎夜お前を抱きしめて眠りたい』


言われるたび、心が振り子のように大きく揺れる。

嬉しいのに、自分を守って逃げ道を確保してしまう私はズルい意気地なしだ。
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