再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
いつもと変わらない水曜日の午後五時すぎ、取引先のお客様を見送るため階下へ向かう。
この後、六時から接待予定がある惺さんは、慌ただしく外出準備をしていた。
きっと今は駐車場に向かっているはずだ。
「わざわざ見送りにきてもらって悪いね」
「嵯峨がお送りできず申し訳ございません」
「いやいや、急に訪ねたのは私だから……おや、珍しい方がいるね」
お客様の驚いた声に視線を辿ると、受付にひとりの細身の女性が立っていた。
「お知り合いですか?」
「直接の面識はないが、舘村薬品工業のお嬢さんだ。ここにいるなら、あの話はあながちデマじゃないのかな」
舘村薬品工業株式会社は日本でトップクラスの規模を誇る製薬会社だ。
その歴史は古く旧伯爵家の血筋の名家らしい。
「おめでたい話だし、決まった際はぜひ教えてほしい」
朗らかに言われ、戸惑う。
「申し訳ございません。お話の見当が……」
「武居さん、知らないの? 嵯峨副社長と舘村のご令嬢との婚約だよ」
耳に飛び込んできた情報に、頭を鈍器で強く殴られた気がした。
ドクンと鼓動が大きな音を立てる。
この後、六時から接待予定がある惺さんは、慌ただしく外出準備をしていた。
きっと今は駐車場に向かっているはずだ。
「わざわざ見送りにきてもらって悪いね」
「嵯峨がお送りできず申し訳ございません」
「いやいや、急に訪ねたのは私だから……おや、珍しい方がいるね」
お客様の驚いた声に視線を辿ると、受付にひとりの細身の女性が立っていた。
「お知り合いですか?」
「直接の面識はないが、舘村薬品工業のお嬢さんだ。ここにいるなら、あの話はあながちデマじゃないのかな」
舘村薬品工業株式会社は日本でトップクラスの規模を誇る製薬会社だ。
その歴史は古く旧伯爵家の血筋の名家らしい。
「おめでたい話だし、決まった際はぜひ教えてほしい」
朗らかに言われ、戸惑う。
「申し訳ございません。お話の見当が……」
「武居さん、知らないの? 嵯峨副社長と舘村のご令嬢との婚約だよ」
耳に飛び込んできた情報に、頭を鈍器で強く殴られた気がした。
ドクンと鼓動が大きな音を立てる。