再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
その後、必死に転職情報を集め、引っ越し先を探した。
社内で惺さんを見かけ、話すたびに決意が揺らぎそうになった。
一緒に東京へ行きたいと何度口にしそうになったかわからない。
けれど、舘村さんの表情とレコーダーの彼の声が脳裏によみがえり、どうしようもない現実と願望に苛まされた。
夜は眠りが浅くなり、食欲も落ちていった。
惺さんは本社に戻ると公表し、さらに忙しくなった。
お世話になった取引先への挨拶回りなどが連日続き、ふたりきりではまったく過ごせていない。
皮肉にも今の私にはありがたい状況となっていた。
「武居さん、最近顔色が悪いようですが、大丈夫ですか? 体調が悪いなら休んでくださいね。ずっと働きづめでしょう?」
金曜日の夜に残業をしていると、渕上さんに声をかけられた。
連日、自宅で夜中過ぎまで新生活のための検索ばかりしているせいかもしれない。
「副社長の引継ぎ資料作成で、負担をかけて申し訳ないですね」
「平気です。渕上さんのほうこそお忙しいでしょう」
惺さんの右腕である渕上さんも、東京に戻ることが決まっている。
「私がお誘いできる立場ではありませんが、ぜひ一緒に東京へ来ていただけませんか。武居さんは優秀な秘書ですし、なにより副社長に必要な人ですから」
眼鏡の奥の目を細める上司に、胸が鉛を含んだように重くなった。
社内で惺さんを見かけ、話すたびに決意が揺らぎそうになった。
一緒に東京へ行きたいと何度口にしそうになったかわからない。
けれど、舘村さんの表情とレコーダーの彼の声が脳裏によみがえり、どうしようもない現実と願望に苛まされた。
夜は眠りが浅くなり、食欲も落ちていった。
惺さんは本社に戻ると公表し、さらに忙しくなった。
お世話になった取引先への挨拶回りなどが連日続き、ふたりきりではまったく過ごせていない。
皮肉にも今の私にはありがたい状況となっていた。
「武居さん、最近顔色が悪いようですが、大丈夫ですか? 体調が悪いなら休んでくださいね。ずっと働きづめでしょう?」
金曜日の夜に残業をしていると、渕上さんに声をかけられた。
連日、自宅で夜中過ぎまで新生活のための検索ばかりしているせいかもしれない。
「副社長の引継ぎ資料作成で、負担をかけて申し訳ないですね」
「平気です。渕上さんのほうこそお忙しいでしょう」
惺さんの右腕である渕上さんも、東京に戻ることが決まっている。
「私がお誘いできる立場ではありませんが、ぜひ一緒に東京へ来ていただけませんか。武居さんは優秀な秘書ですし、なにより副社長に必要な人ですから」
眼鏡の奥の目を細める上司に、胸が鉛を含んだように重くなった。