再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
「春香、素直に応援する、協力するって言えないの?」


女将は呆れたように肩を竦める。


「私も春香も嵯峨副社長に伝えるべきだと思うけれど、そこは母親のあなたの考えを尊重するわ。この件は一切他言しないけれど、力になりたいわ」


「だから、武居さん。うちに就職して東京に引っ越してきなさい」


思いがけない援助に目を見開く。

とくに沢野井さんの優しい強引さが嬉しかった。


「でも……私……」


「乗りかかった船だし、求人で切羽詰まっていたのは事実だもの。来てくれたら助かるわ」


「育児はひとりではできないわ。今から誰かに甘える癖をきちんとつけなさい。母親がなんでもひとりで抱え込んではダメよ」


ふたりの温かな言葉に胸が詰まった。


「ありがとう、ございます」


こみ上げる涙を瞬きで必死に押し戻す。

検査結果を知ってから、反対されるのではと緊張していた体からすとんと力が抜けていく。


この人たちに出会えたのは本当に幸福だったと心から思った。


「いつか、この赤ちゃんにお父さんについて真実を教えてあげてね」


どこか寂しそうに女将に告げられ、大きくうなずいた。
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