再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
これから仕事なのだから過去を振り返っていてはダメ、しっかりしなくては。

気分を入れ替え、急いで自宅に戻り、パソコンを起動する。

さあ、勤務開始だ。

事務作業に取り掛かっていると、春香さんから電話がかかってきた。


『おはよう、希和ちゃん。悟己くんは今日も元気に登園した?』


「ええ、おはようございます。先ほど白鳥さんに会って、この間の贈り物が先方に喜ばれたのでお礼を伝えてほしいと言われました」


『あら、よかったわ。こちらこそいつもご贔屓いただいてありがたいわ。まあ、彼の目当てはうちの商品より希和ちゃんでしょうけど』


「春香さん、以前も言いましたけど違いますよ。同じクラスの保護者同士なだけです」


全力で否定すると、ハイハイと受け流された。

春香さんは知り合ったあの日から、ずっとそばで私を助けてくださっている。

妊娠が判明してすぐ、せっかちなのと言いながら雇用条件や勤務場所などについて詳しく説明してくれた。

妊娠中はなるべく体に負担がかからないようにと配慮してくださり、出産後は在宅ワーク中心に勤務している。

さらに悟己や私の体調、行事を常に気にかけてくださるおかげで、安心して働けている。


『今日、見積表の作成をお願いできる? 午後はお客様用の手土産を嵯峨百貨店で受け取って、店に持ってきてほしいの』


「わかりました」


ほかにも詳細な指示と説明を受けて、通話を終えた。

換気のため開け放した窓からはセミの鳴き声が聞こえていた。

七月半ばを過ぎ、ここ東京は連日猛暑日が続いている。

今日も暑くなるだろう。
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