再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
惺さんが出張から戻るギリギリまで幾度も両親と話したが、どうしても理解を得られず、親不孝にも私は東京へ旅立つ選択をした。

携帯電話の番号を変え、SNSの類もすべてやめた。

そして新たにメッセージアプリのみをごく限られた人とだけ利用した。

以来、両親との関係には亀裂が入り、疎遠になっている。

今の住所も両親には知らせていないが、春香さんに促され勤務先だけは伝えた。

春香さんが雇用主として両親に説明すると言ってくれたが、さすがにそこまで迷惑はかけられず辞退した。

杏実には引っ越し準備の際にすべてを伝えた。

なんですぐに頼らなかったのか、と怒ると同時に心配された。

杏実の自宅から私の自宅までは電車で二駅だ。

親友は春香さんの店も訪れ、女将とも幾度となく電話で話している。

妊娠中、出産の際も数え切れないくらい助けてもらった。

今の私は多くの人に支えられ、毎日を過ごしている。

いつかこの恩を返せるようにと決意を新たにして、目の前の仕事に取り掛かった。
< 85 / 200 >

この作品をシェア

pagetop