再縁恋～冷徹御曹司の執愛～

樋浦恵理(えり)さんは宗太先輩の幼馴染で、札幌の名家のお嬢様だ。

幼い頃から一途に先輩を想っていて、先輩に近づく女性をことごとく排除してきたのは有名な話だ。


「なんだっけ？　希和は無類の男好きで、バイト先でも遊んでいて？　合コンに明け暮れて玉の輿を狙っているだの散々根拠のない噂を吹聴して……思い出すだけでも腹が立つわ！」


先輩と接する機会の多かった私は当然ながら嫌われ、目の敵にされていた。


「先輩の前では猫をかぶってばかりだし。本気であの性悪女の本性に気づいていないのかしら？　女を見る目がなさすぎよ」


眦を釣り上げて、親友が憤る。


「……先輩は知っていると思う。事あるごとに恵理が申し訳ないと謝られたもの」


「家同士の深い付き合いがあるとはいえ、なんで先輩が尻拭いをするの？　愛が重すぎて強く言えないとか？　さっきも希和に暴言を吐いていたし、名家のお嬢様が聞いて呆れるわ」


『平凡な地味女が宗太に近づかないで。身の程をわきまえなさい。今、無職なんですってね？　男漁りをしすぎたせいじゃなくって？』


数分前の挨拶時の出来事を思い出す。

陶器のように綺麗な肌を紅潮させ、艶やかな黒髪を指先で弄びながら冷たい目を向けられたのは記憶に新しい。

運よく宗太先輩がやってきて、すぐに解放されてホッとした。