再縁恋～冷徹御曹司の執愛～
『舘村家は虎視眈々と妻の座を狙っているけど、副社長が断っているらしいわ。ちなみに先輩も樋浦さんに本格的に迫られているそうだけど婚約していないんですって』


唐突に知らされた事実に混乱する。

止まっていた時間が急激に動き出した気がした。


「――希和ちゃん？　大丈夫？」


春香さんの呼びかけにハッと我に返った。


「すみません、あの……杏実からも話を聞いたんです」


今しがた思い出していた電話の内容を伝えると、春香さんは二重の目を細めた。


「杏実ちゃんの情報はかなり信憑性が高いわね。姉さんも少し前、嵯峨副社長の部下に、それとなく副社長の婚約について尋ねたら知らないと言われたそうよ」


「……すみません、本当にいつもご心配をおかけしてばかりで」


自分の問題なのに、助けてもらってばかりで情けなく、申し訳ない。

もしかしたら、このタイミングで再会したのは、きちんとケジメをつけなさいと神様に言われているのかもしれない。


「……私、惺さんと会って話をしようと思います」


「本気なの？　嵯峨副社長が悟己ちゃんの存在を知っているかどうかも不明なのよ」


「都内にいるとバレた以上、嵯峨家の力を使えば住所を突き止めるのは時間の問題でしょうし、逃げきれないと思います」


思うところがあるのか、春香さんが険しい表情を浮かべる。

むしろ、今までが幸運すぎた。
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