再縁恋~冷徹御曹司の執愛~
連れてこられたのは都内の一等地にそびえ立つタワーマンションだった。

地下の駐車場に車を停め、助手席のドアを開けた彼が降りるように促す。

惺さんの目からはなんの感情も読み取れない。

無言のまま、左手を絡み取られエレベーターホールに向かって歩き出す。

札幌のマンションも豪華だったが、ここはそれ以上だ。

やってきたエレベーターに乗り込むが、相変わらず惺さんはなにも話さない。

最上階の三十階で扉が開き、手が引かれる。

静まり返ったフロア内には扉がひとつしかなかった。

彼がカードキーでドアを手早く解錠する。


まさか……このフロア全部が自宅なの?


改めて嵯峨ホールディングスの財力を思い知らされた気がした。


「入って」


「……お邪魔します」


ここまで来た以上、話さずには帰れないだろう。

覚悟を決めて、大理石を敷き詰めた玄関に足を踏み入れる。

靴を脱ぐ彼の後ろで、ちらりと腕時計に視線を落とす。

店を出る前に念のため、延長保育をお願いしてよかった。

午後七時半までには迎えにいかなければ。

春香さんにこれ以上甘えるわけにはいかない。

考えながら靴を脱いだ途端、ふわりと体が浮いた。


「えっ……」


バサリと真っ白なフローリングの床にバッグが落ち、抱き上げられていると遅ればせながら気づいた。
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