飛べない小鳥は見知らぬ運命の愛に震える
「この名前、好きじゃないんです。名前負けしてて」
「負けてないよ。あなたは充分に魅力的だ」
それに、と女性は続ける。
「私の名前には鷹が入っている。鳥という点ではおそろいだ」
優しさが琴鳥の心に温かかった。知らず、胸が高鳴る。
「ああ、微量だがフェロモンを出し始めたね。私を気に入ってくれたようだ」
「え!? 薬、飲んで来たのに」
美鷹が琴鳥を抱きしめる。
「甘い。酔いそうだ」
美鷹の囁きこそ琴鳥の耳に甘い。ほろほろとほどけていきそうだ。体が熱くなり始める。
「運命の番に出会うと、周期など関係なくフェロモンを出すらしい。君、もしかして私の運命の番か?」
アルファとオメガの間にあるという、運命の絆。出会った瞬間に惹かれ合い、一生を愛し合うという。
「そんな、こと……」
そうであったらいいのに。
琴鳥は美鷹の体温にうっとりと寄りかかる。
美鷹がその顎をツイと持ち上げる。
視線がからむ。
美鷹の顔が近づき、琴鳥は目を閉じた。
「何してるんだ!」
男の声が響き、琴鳥はハッとそちらを見た。驚いたハトが飛び立った。
30過ぎと思われるメガネの男がこちらを睨んでいた。メガネ越しでもわかる、目つきの悪さ。ぼさぼさの黒髪に、くたびれた濃紺のスーツを着ていた。
「節操なくフェロモンを出すのをやめろ」
顔をしかめ、鼻をつまんで男は琴鳥に言う。
琴鳥は慌ててバッグを探った。フェロモンが出るのはヒートが起きかかっているからだ。ヒートを抑える液体の頓服薬を取り出し、飲む。
「お前ら、離れろ」
琴鳥は怯えて美鷹に体を寄せた。
「先にお帰り。この男は私がひきとめるから」
美鷹はそう言って琴鳥の手に名刺を握らせる。
「この名刺はプライベートなものだ。誰にでも渡すわけじゃない。必ず連絡してほしい」
「はい」
「負けてないよ。あなたは充分に魅力的だ」
それに、と女性は続ける。
「私の名前には鷹が入っている。鳥という点ではおそろいだ」
優しさが琴鳥の心に温かかった。知らず、胸が高鳴る。
「ああ、微量だがフェロモンを出し始めたね。私を気に入ってくれたようだ」
「え!? 薬、飲んで来たのに」
美鷹が琴鳥を抱きしめる。
「甘い。酔いそうだ」
美鷹の囁きこそ琴鳥の耳に甘い。ほろほろとほどけていきそうだ。体が熱くなり始める。
「運命の番に出会うと、周期など関係なくフェロモンを出すらしい。君、もしかして私の運命の番か?」
アルファとオメガの間にあるという、運命の絆。出会った瞬間に惹かれ合い、一生を愛し合うという。
「そんな、こと……」
そうであったらいいのに。
琴鳥は美鷹の体温にうっとりと寄りかかる。
美鷹がその顎をツイと持ち上げる。
視線がからむ。
美鷹の顔が近づき、琴鳥は目を閉じた。
「何してるんだ!」
男の声が響き、琴鳥はハッとそちらを見た。驚いたハトが飛び立った。
30過ぎと思われるメガネの男がこちらを睨んでいた。メガネ越しでもわかる、目つきの悪さ。ぼさぼさの黒髪に、くたびれた濃紺のスーツを着ていた。
「節操なくフェロモンを出すのをやめろ」
顔をしかめ、鼻をつまんで男は琴鳥に言う。
琴鳥は慌ててバッグを探った。フェロモンが出るのはヒートが起きかかっているからだ。ヒートを抑える液体の頓服薬を取り出し、飲む。
「お前ら、離れろ」
琴鳥は怯えて美鷹に体を寄せた。
「先にお帰り。この男は私がひきとめるから」
美鷹はそう言って琴鳥の手に名刺を握らせる。
「この名刺はプライベートなものだ。誰にでも渡すわけじゃない。必ず連絡してほしい」
「はい」