素直に好きと言えたら*遠回りな恋*
守谷くんがジェットコースターの列に並んでしまったから私もそこについて行くしかなくて。
並んでいる所から斗真たちが見える。
麻里はお茶をしながら私たちに手を振ってくれるけど、斗真は私と守谷くんのことを見ない。
「羽瀬さん、さっきから誰のこと見てる?」
慌てて斗真から守谷くんに目線を移し、その言葉を頭の中で再生する。
私、誰を見てた?
「今日は俺とのデートだろ。よそ見してんなよ」
「で、デートって。あの、私まだ守谷くんがどうして私に声を掛けてきたのか聞いてない」
「さあね。ちょっとした興味?」
やっぱり私はからかわれている。
ちょっとした興味ってどう言う意味なの。
「もし守谷くんのグループで面白がってるだけならこんなのデートでも何でもないよ。それに私、そんな風に言う守谷くんのこと信用できない」
守谷くんは少し怒ったような顔をして私に反論した。
「信用されてないのは、まあいいよ。それはこれからの俺次第だし。それと俺のつるんでるやつらが言う勝ち負けってのは本当に悪かった。俺のことを面白がってるだけなんだ。羽瀬さんだからどうのとかじゃないから」
「本当に? 私からかわれてたわけじゃないの?」
「ああ。でももしアイツらが羽瀬さんに何か言って来たら教えてよ。羽瀬さんのこと守るし」
ただ興味があるだけって言ってるのに私を守るとか、そんなことを涼しい顔で言えちゃう守谷くんって女性の扱いに慣れてるよね。
「あー、でもアイツの方が羽瀬さんのこと守りたいんだろうけどな」
アイツと言いながら守谷くんの見ている先を目で追うと、さっきまでこっちを見ていなかった斗真と目が合った。
えっと、守谷くんの言いたいことはなに? なんだか私の心を見透かされているよう。
「えっ、斗真が? そんなことないよ。斗真は麻里のことが好きだから。私はあの2人を応援してるの」
「へぇ、羽瀬さんはそう思ってんだ。ほんと羽瀬さんって計算できない女だな」
「ねえそれ、私が計算できないとか意味が分からない」
「はははっ。この先嫌でもその意味を理解する時が来るよ」
守谷くんは私が何を計算できないって言ってるの?
守谷くんの言葉の意味を眉間に力を入れて考えていると、
「そんな怖い顔で考えないでよ。もし羽瀬さんがこの先計算できなくて苦しくなったら俺のこと頼って来いよ」
守谷くんは本当に女たらしだ。
守ってやるとか頼って来いとか、昨日今日初めて話した私に良くそんなことが言えるよね。
「守谷くんって、変な人」
さすがに女たらしとは本人に言えないから言葉を選んだけど。
「そっかー、俺は変な人か」
って守谷くんが笑った。
その笑った顔がとても楽しそうだったから、私もフフッてなった。
「守谷くんってもっとこう、派手で俺様な人かと思ってた」
「やっぱり羽瀬さんって俺のこと相当悪いイメージ持ってたよな。でもそのイメージがいい方に変わって来たなら、それってもう俺のこと好きじゃん」
「ちっ、ちがっ、好きとかじゃないっ! バカ!」
はっ! 守谷くんに対してバカって言ってしまった。
私は慌てて自分の口を押さえたけど、守谷くんはそんな私に微笑んで、
「羽瀬さんが俺に遠慮なく物事を言えるようになっただけでも、今日ここに誘って良かったよ」
自分でもびっくりした。
斗真に対して何の遠慮もなく話せるようになるまで数か月掛かったのに、守谷くんは知り合ってまだ数日で自然と私の中にスッと入ってくる。
女慣れしてるって、怖い。