ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 本当に嬉しそうに頬を染め、真っ直ぐ伝えられるその言葉にドキリとした。

“なによ、もう……。本心だって信じたくなっちゃうじゃない”


「そうだエッダ、これを」
「あら? それ、もしかして」
「ネモフィラの花だよ」

 迎えに来るにしてはやけに早いと思っていたが、どうやらメルヴィは今私が着ているドレスの元になったという花を持ってきてくれたようで。

「ではこちらを髪の毛に編み込ませていただきますね」
「あぁ、頼む」

 ドレスも、そして髪さえも彼の色で染められるようで少しくすぐったく感じた。
 

「このままどんどん綺麗になっていくリリを見ていたいけど、ごめんね。まだ少し夜会のことで打ち合わせがあるから」

 申し訳なさそうに眉尻を下げたメルヴィに、私は精一杯笑顔を向けると、また後で迎えに来るからと一言残した彼はそのままあわただしく部屋を後にした。


「やっぱり王太子だもの、忙しいのね」
「そうですね。この国唯一の直系ですし、現陛下のお子は殿下しかおられませんから」
「そうね……」

 メルヴィのご両親、つまりはこの国の陛下と王妃殿下の間には子がなかなか恵まれなかった。
 
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