ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける

14.そんな発表、誰も求めてない

 私たちが入場した瞬間、一斉に来場者の視線が向けられビクッとしてしまう。

“そ、そうよね……!? 急遽開かれた王家主催の夜会で、王太子がどこの馬の骨とも知れない女を連れて入場したんだもの”

 あの女は誰だ、と値踏みされたような視線を感じ萎縮した。
 これは私が勝手にそう感じただけなのかもしれないし、本当にそういった視線を向けられているのかもしれないが……

「リリ」

 耳元で優しく名を呼ばれ、視界いっぱいがメルヴィで埋まる。
 もちろんこんな状況のこんな場所で触れてなどいないが――

「きゃぁぁあ!!」
「ッ!?」

 途端にそこかしこで上がった甲高い悲鳴に思わずため息を吐く。
 角度的に、彼らから見れば口付けていたように見えたのだろう。
 

“わざとやったわね”

 そう思った理由は二つある。
 一つはもちろん、メルヴィが可笑しそうに笑っていたからだ。

 そしてもう一つは。

「メルヴィ! お前はッ」
「申し訳ありません、陛下。さぁ、開始のご挨拶をどうぞ」

 ったく、と小さく呟いた陛下はすぐに来場者の方へ向き直る。
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