ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
“当然挨拶はするわよね?”

 居候させて貰っている身にも関わらず家主たる陛下にまだご挨拶をしていないのは問題だっただろうか。
 それともメルヴィが連れてきたから免除されているのだろうか。

 いや、そもそも陛下へのお目通りがそう簡単に通るとも思えないので、今までは仕方なかったとして……さすがにこの場では挨拶しない訳にはいかないだろう。
 
 陛下の挨拶があとどれくらい続くのかはわからないが、その後のことを考えると鈍く頭痛がする。
 せめてメルヴィに話の主導権が移る前に心の準備をしたい、とそんなことを考えていたのだが。

「我が息子、メルヴィから伝えたいことがあるとのことだ」
「もう順番が!?」

“想定より10倍早いんだけど!”

 ひえっと小さく悲鳴を上げた私とは違い、まるで待っていましたと言わんばかりに一歩前にメルヴィが進む。

 もちろん手を握られたままの私も強制的に前に進んで。


「本日はお集まりくださりありがとうございます」
“な、何を発表するの? 普通に考えたらこれ、婚約発表とかそういうことなの!?”
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