ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
“これって、私の魔法が発動したってことよね?”

 はじめてまともに発動したかもしれない魔法。
 確かに願望にまみれていたのは間違いない。
 間違いないが――


「これっ、国家反逆とかなんかそんなのになりませんッ!?」

 魔法で王太子の心を私の願いのままに変えたのだとすれば、それはもう国を謀ったようなものではないだろうか。

“本物!? というか本物ならなんで一人でこんなところにいるの!? でも気軽にこの名前を名乗ったならばそれこそ処刑じゃない!?”

 混乱を極める私をじっと見つめる紺の瞳が、ふっと柔らかく細められて。


「――気になりませんか、王城にある私室がどんなものなのか」
「え?」
「王族、またはその地位に準ずる者しか知り得ないことですよ」

“本来私には知り得ないこと……?”


 耳元で囁かれるソレは抗いがたい甘美な誘惑。

「気になるはずだ、だって君たちは自分の興味に忠実だから」
「で、でも」
「さぁ、名前を教えて?」
「り、リリアナ……、リリアナ・ユングステッド」
「ありがとう、リリ」

 ふわりと綻ぶように笑うその顔にドクンと心臓が跳ねる。

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