ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「簡単な推測だよ。会場内に特別大きな人だかりも特別大きな穴もなかったからそこにはいないと思ったんだ」
「大きな……穴?」

 特別大きな人だかり、は理解できる。
 一瞬であんなに囲まれたのだ。
 同じ状況になった可能性を想定してくれているのだろう、が、穴とはなんだ。

 それが何を意味しているのかわからず首を捻っていると、ニッと口角を上げたメルヴィが再び口を開く。

「まるでドーナツの中心のように人が集まらないパターンのこと……いだだッ、どうしてまた!?」
「つまり私が嫌がられて人から避けられてるってことでしょ!」
「ちがっ、俺の牽制が効いてるって話で……っ!」

 流石に同じ足への連続攻撃は痛かったのか、ひいっと彼の顔色が少し悪くなったのを確認して早々に足を解放してやると、しゃがみこんで自身の足を撫でていた。

“さ、流石にやりすぎたかしら”

 しゃがんでいるメルヴィの体が軽く震えていることに気付き、爪先で捻るのはまずかっただろうかと不安になる。

 なかなか立ち上がらない彼に、もしや折れているのでは、と焦りはじめたその時だった。

「……ぷっ」
「…………」
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