ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
「王子サマがそんな顔していいの?」
「今見てるのはリリだけだからね」
「なによ、私なんかどうでもいいってこと?」
「逆でしょ。リリだけ特別」

 さらっと言われドキリとする。

“これも魔法の影響だってわかってるのに”

 最近はこの胸の高鳴りを誤魔化せなくなってきた気がして少し胸の奥が重苦しく感じた。

 
「……ここから飛び降りて逃げる……は、無理か」

 そんな私には気付かないメルヴィは、そっとバルコニーから下を覗き大きなため息を吐く。

“飛び降りて……?”

「仕方ない、また王子の仮面を付けて対応してこようかな」
「……その必要はないわ」
「?」

 彼の呟きを噛み締めるように脳内で反芻した私は、私が見つからないうちに、と会場内へ戻ろうとしたメルヴィの腕をグイッと引っ張った。


「ここ、座って」
「え?」

 グイグイと引っ張りながら腰かけたのは、休憩が出来るようにと設置されている少し小さめのソファである。

 小さめ、とは言っても二人で並ぶには十分なサイズがあり、そこは流石王城、といったところなのだろう。

「だが、ここは中から丸見えだ。見つかったらリリまで囲まれて」
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