ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 好みの顔が私を誘うように微笑み、魔女の習性をくすぐって。

「さぁ、知りたいことを確かめに行こう」

“そうよ、どうせ師匠が戻ってくるまで私に帰る家はないもの”


「……行く」

 気付けば私はこくりと頷いていた。

 勝手に魔法で心を変えたことが後々どんな問題になるかはわからない。

 わからないけれど。


“それを含めて気になっちゃう……!”

 これこそまさに魔女の性。
 私は好奇心を掻き立てられるまま、彼と手を繋ぎ一歩を進み出したのだった。



 一人で来たのかと思っていたが、やはり本物の王太子だったのだろう。
 手を引かれ歩いた先には王家の紋が入った馬車が待っており、護衛もいて。

「足元気をつけて」
「あ、ありがとう」

 はじめて受けるエスコートにドギマギとする。

“ほ、本物の令嬢になったみたいなんだけど……!”

 この優しさは魔法で作られたものだとわかっていながら高鳴る鼓動が止められない。


 はじめて乗る馬車は想像よりスピードが出ないのか窓の外の景色をゆっくりにしか動かさないが、逆に外の景色をしっかりと見れて私の興味を存分にそそった。

「楽しい?」
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