ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 さっき立っていた場所はバルコニーの扉から死角になっていた。
 けれどソファは、ガラス扉から丸見えの位置に配置されていて。


「見つかっても問題ないわ」

 戸惑いながら私を心配するメルヴィに、ニンマリとした笑顔を向ける。

“そう、問題なんてないの”

 くすっと笑った私は、すぐに魔法を発動するべく全力で願った。
 願いはもちろん、『二人で飛べますように』だ。

“あんな棒に跨がって飛べたんだもの。二人並んだこのソファだって浮かぶはずだわ”

 過去に一度飛んだからか、しっかり脳内でイメージが固まる。
 思考がクリアになり願いがシンプルだからだろうか。
 私が強く願うと、ソファがふわりと浮かんで。

 
「空なら、見つかっても誰も来れないわ!」
「う、うわぁ!?」
 
 そう断言すると、そのまま高度を上げたソファはゆらゆらと少し不安定な動きをしつつ、その会場の屋根に着地した。


「な……っ!」
「で、殿下ぁ!?」
「あ、あの子は魔女だったのか……!」

 バルコニーに辿り着いた貴族たちが浮かぶ私たちを見つけ口々に叫ぶ。
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