ポンコツ魔女は王子様に呪い(魔法)をかける
 せめて胸元で切り返しがあったり、体のラインが出るようなデザインだったらまだ色気があったのかもしれないが、残念ながら上からストンと着れるタイプのこのワンピースは、確かに汚れは目立たなさそうだが一言で言えば地味だった。

 畑仕事で実際に汚れることも考慮してこの服を選んでくれたのだろう、着替えが楽なのは間違いないが。

“畑仕事にしか考慮されていない……!!”

 もちろん私がそう言ったのだからエッダは何一つ間違っていないが、畑仕事の後に行うことを考えればどう考えても不適切なこの服。

 どうしてそこまで考えられなかったのか、と思わず頭を抱えた私を見たメルヴィは、こんな時ですら堪えきれずププッと吹き出した。


「……あの、笑えばいいってもんじゃないんですけど」
「ごめん、百面相してるリリが面白くて」

 ククク、と噛み殺すように笑い続けるメルヴィは、まるで寝巻きのような服を纏っている私に向かって右手を差し出した。

 その差し出された手にすぐ自身の手を重ねる。

「あれ、少しは躊躇われるのかと思ったけど」
「夜会であんな発表したのはどこの誰よ。今さら手くらいで動揺しないわ」
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